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先行き不透明な時代こそ経営多角化にトライしよう!
経営多角化と聞くと、「ヒト・モノ・カネ」が豊富な大企業の戦略だと思うかもしれません。しかし、小回りの利く中小企業だからこそ、市場規模は小さくても存在感のある事業ブランドを複数持つことが可能です。
少子高齢化の影響を受け、縮小する市場で売上を伸ばすのは簡単なことではありませんが、新規の事業での成果は、そのまま会社の業績アップにつながります。自社をもっと発展させるために中小企業が取るべき戦略を考える時、経営多角化は魅力的な選択肢です。
本記事では経営多角化のメリットと気をつけなければならないリスクに焦点を当て、先行事例を交えて説明します。さらに、経営多角化を成功させるポイントや、経営多角化の手段の一つ、不動産賃貸経営についても紹介します。
経営多角化とは
経営多角化とは、企業の事業をひとつに絞るのではなく、新しい市場や業界に参入することで、新たな収益源を生み出すとともに、ビジネス全体のリスクを軽減する経営戦略です。優れた多角化戦略は、苦境に立たされているビジネスを活性化させることができます。また、すでに利益をあげている企業の成功をさらに伸ばすことも可能です。具体的に経営多角化とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
経営多角化の4種類
経営多角化には進め方によって次の4つの種類があります。それぞれの事例とあわせて具体的に見ていきましょう。
1. 水平型経営多角化
水平型多角化は、自社の生産技術を応用して新市場に参入することです。例えば1984年にMacintoshパーソナルコンピューターを発売したAppleは、1990年代には停滞期を迎えていました。しかし、2001年パーソナルコンピューター技術を活かしてiPodを開発し、音楽プレーヤー市場で大きな成功を収めました。こうして多角化に道を開いたAppleは、2007年のiPhoneによって大成功を収めることになります。
2. 垂直型経営多角化
垂直型経営多角化は、供給チェーンの上流や下流に進出して、製造や販売に関連する新しい事業領域を展開することです。一例を挙げると、高級スーパーマーケットの成城石井は、自社で扱うワインの知識や食料品の開発力、消費者の嗜好の理解などのノウハウを活かし、ワインバー「Le Bar a Vin 52 AZABU TOKYO」を展開しています。
3. 集中型経営多角化
集中型多角化は、既存技術やノウハウを活用して従来とは異なる分野に進出する戦略です。代表的な例として、富士フィルムがあります。富士フィルムは、デジタルカメラの台頭によってフィルム市場が縮小する中、医療分野や化粧品事業に進出しました。同様にフィルム製造を行っていたアメリカのコダック社がデジタル化への対応が遅れ、事業の転換が遅れたために経営破綻に至ったことと明確な対照を見せています。
4. コングロマリット型経営多角化
コングロマリット型経営多角化は、既存技術を活かした商品開発戦略で水平的に多角化することに加え、異なる業界や事業領域にも進出し、総合的な多角化を目指すことです。代表的な例としてソニーがあります。エレクトロニクス分野でスタートしたソニーは、技術を活かしゲームや映画制作、音楽制作、カメラなどの分野に進出するだけでなく、半導体分野にも進出、さらには金融など従来とはまったく異なる業界にも進出し、幅広い製品とサービスを提供しています。
経営多角化のメリットと回避すべきリスク
経営多角化にはさまざまなメリットがあるとともにリスクもあります。メリットを理解した上で、リスクを回避する必要があります。
経営多角化の4つのメリット
経営多角化のメリットは、次の4点にまとめることができます。
新規顧客の獲得
既存の製品またはサービスの市場が飽和し、これ以上の成長が望めなくなった場合でも、企業は多角化によって新しい顧客を獲得できます。先に紹介したAppleも、iPodという新たな領域に展開することで、新しい顧客を音楽の分野で獲得しました。
リスク管理
多角化によって、企業は投資を分散できます。特定の市場の成長が鈍化したり、急変したり、急激な技術革新によって自社製品が陳腐化した場合でも、リスクを軽減できます。例えばソニーはテレビやパソコンなどの事業で低迷し、約1,000億円の赤字を出したものの、金融事業が業績を下支えしました。
競争力の向上
多角化により、企業はより幅広い製品やサービスを提供することで、競合他社が参入できない新しい市場を開拓できるようになります。先に紹介した富士フィルムも、デジタルカメラの登場によってフィルムの需要は大幅に減少しましたが、技術を生かして医療や化粧品に多角化を進めることで、業績を伸ばすことに成功しました。
事業間のシナジー効果が生まれる
強いコアビジネスを元に多角化を行うことで、顧客の多様なニーズにワンストップで応えることができます。例えば多角化によるシナジー効果を最大限上げている企業としてAmazonがあります。もともとはオンライン書店として始まったAmazonは、ビデオゲームやマルチメディアの販売を皮切りに家庭用電化製品、ソフトウェア、家庭用品、おもちゃなどを販売するようになりました。
今日では多くの消費者がまずAmazonで検索し、商品を確かめてから購買行動を起こすというスタイルになっています。さらにAmazonが提供するAWSはクラウドコンピューティングのプラットフォームとして、多くのビジネスで利用されています。
経営多角化の3つのリスク
大きなデメリットのないのが経営多角化の魅力の1つでもあるのですが、経営多角化を進める上でのリスクは生じます。
ブランドイメージが希薄化するリスクがある
企業努力によって、これまで「〇〇といえば~社」という強固なブランドを築いてきた会社であれば、多角化することで、これまでブランドが築いてきたイメージが希薄化することを回避しなければなりません。一例として、バイクメーカーとして世界的に有名なハーレーダビッドソンは、1990年代に多角化戦略として、男性用香水の分野に参入しました。
しかし、ハーレーダビッドソンの愛好者たちは、自分たちが愛好する男らしいイメージが男性用の香水によって毀損されたと怒り、発売は失敗に終わりました。以降同社は多角化を慎重に検討するようになりました。
企業全体の利益率が低下するリスクがある
経営多角化を目指して新市場に参入しても、その市場で成功できるかどうかは十分なリサーチが必要です。イギリスでヴァージン・レコードを立ち上げたリチャード・ブランソンは、その後ヴァージン・アトランティック航空、ヴァージン・メディアなどさまざまな業界に参入して多角化を成し遂げました。
しかし、ヴァージン・コーラで飲料業界に参入しようとした時は、コカ・コーラやペプシ・コーラなどの既存企業に太刀打ちできず、短期間で撤退を余儀なくされました。ヴァージン・グループは規模が大きかったため、この失敗から生き残り、前進することができましたが、中小企業では致命的なものになるかもしれません。
企業全体の焦点が絞れず経営が非効率化するリスクがある
多角化に対する焦点が絞られていないまま複数事業に進出すると、経営効率が落ちるリスクがあります。イギリスの大手セメント企業ブルーサークル
は、1970年代のエネルギー危機で低迷した企業の打開を経営多角化に求めました。
住宅建設に関連して不動産、レンガ、廃棄物処理、ガスストーブ、浴槽、さらには芝刈り機にまで手を広げましたが、どれも成功しなかったばかりか、核となるセメント事業もシェアを落とし、2001年にはフランスのラファ―ジュ社に買収されることになりました。経営多角化では自社のコア事業を見定め、その強みを最大限活用できるのはどこなのかを見定める必要があります。
経営多角化を成功に導くポイント
経営多角化を目指す場合、どのようなプロセスで新事業を計画し、立ち上げていくのかは重要なポイントです。もちろん既存の事業によって計画の立て方はさまざまですが、大きく分けて次の3つを考えます。
- (1)商品開発での多角化
- (2)市場開発での多角化
- (3)異業種進出での多角化
(1)商品開発での多角化
商品開発での多角化とは、現在の事業に新しいノウハウを加えて、既存の顧客に新しい付加価値を提供します。例えばオンライン書店からスタートしたAmazonが、家電やファッション、食品など商品ラインナップを拡充したように、現在持っているノウハウに何かをプラスするやり方です。自社のノウハウを活かして事業をプラスできないかを考えてみましょう。
(2)市場開拓での多角化
これは、現在の事業をベースに新しい市場を開拓する方法です。例えばAmazonがプラットフォーム運用のノウハウを活かしてAWSとしてビジネスプラットフォームを提供しているように、BtoCからBtoBに顧客を拡大するやり方や、川上(または成城石井のように川下)に進出するやり方があります。自社の事業のうち、他の市場で展開できるものはないか考えてみましょう。
(3)異業種進出での多角化
現在の事業とは関連のない異業種に進出する方法です。例えば、ソニーが金融に進出したり、居酒屋チェーンのワタミが介護事業に進出したように、思いがけない事業に進出し、成功を収めている企業は数多くあります。
これには主に次のやり方があります。
- フランチャイズ(FC)に加盟する
- 代理権を取得する
- ノウハウや市場を持った企業とジョイントベンチャーする
- M&Aを検討する
FC化や代理店になることは、成功のためのノウハウを購入することでもあるため、比較的参入しやすいですが、利幅はどうしても薄くなる可能性があります。逆に、ジョイントベンチャーは自社が主体となって進め、ジョイント先の企業に対してしっかりとした主導権を持って進めることが重要です。また、M&Aは関連事業のみでは多角化が困難な場合でも、経営多角化を進めることができます。
気をつけたいのが、自社がなぜその分野に進出するのかを明確にするということです。それを怠れば、先述のブルーサークルのように企業全体の焦点があやふやになってしまう危険性があります。
不動産賃貸経営という多角化のススメ
多角化をしようにも何から始めたら良いのかわからない、新商品の開発も、新市場の開拓も、ましてや異業種への進出も自社ではイメージしにくい、という企業でも始められる経営多角化としておすすめしたいのが、不動産賃貸経営です。
経営多角化にはこれまで紹介したやり方のほかに、もうひとつ、不動産賃貸経営があります。近年、既存経営に負担をかけない多角化経営として注目されている分野です。具体的にはソニーはSRE不動産として不動産事業を手掛けているほか、アパレルブランドのniko and…も賃貸学生マンションを運用しています。経営多角化の観点から不動産賃貸経営に参入する企業が増えつつあるのです。
多くの企業が自社の社屋や駐車場、製造工場、倉庫、社員寮など、さまざまな不動産を保有しています。こうした不動産は企業の保有資産ですが、活用されていない資産はありませんか? 「ただ保持しているだけ」の資産は固定資産税を始め、管理その他の費用もかかります。しかし、こうした不動産を賃貸として活用すると、そこから収益を上げることができます。
確かに不動産賃貸経営にはいくつかの問題があります。主な問題としては次の3つがあります。
- ① 運用には知識が必要
- ② 管理などの業務がある
- ③ 税金などの知識が必要
しかし、こうした問題は信頼できる専門家に任せることができます。まずは身近な税理士に相談するところから始めてください。
経営多角化に向けて自社のノウハウや資産の棚卸から始めよう
少子高齢化、AIを始めとした技術の急速な革新など、今後経済状況はどうなるか、不透明さは増すばかりです。このような状況だからこそ、経営多角化は中小企業にとって魅力的な戦略となり得ます。
本記事では、経営多角化の意味から、そのメリットと回避すべきリスクまでを解説しました。経営多角化の最大のメリットとして、新規事業での成果が会社の業績向上につながることや、リスク管理などが挙げられます。一方で、多角化のリスクも忘れてはいけません。
商品開発、市場開発、異業種進出など多角化の方法としてはさまざまなものがありますが、もうひとつの手段として、不動産賃貸経営も検討してください。
中小企業は、自社の発展を促進し、市場の変化に柔軟に対応していくためにも、専門家と相談しながら自社に合った経営多角化を検討しましょう。
代表 石井 輝光
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