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資本性劣後ローンは資金繰りに悩む中小企業の強い味方
新型コロナの影響で、資金繰りが厳しくなっている中小企業は少なくありません。しかし、現在のコロナ禍と物価高騰は永続的なものではありません。今、この場をしのぎさえすれば、通常の経済活動ができる日が来ると考えられますので、資金繰りに悩む中小企業は「資本性劣後ローン」を利用して、財務状況の改善を検討されてはいかがでしょうか? 本記事では資本性劣後ローンとはどのようなものなのか、わかりやすく説明します。ぜひ参考にしてください。
資本性劣後ローンとは?
資本性劣後ローンとは、資金繰りが厳しいスタートアップ企業や、一時的に財務状況が悪化した企業に対し、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫(商工中金)が窓口となって行う制度融資です。
「資本性」とは? また「劣後」とは?
「資本性劣後ローン」というと難しそうに聞こえますが、この融資の特徴ともいえる「資本性」と「劣後」の意味を最初に整理しておきましょう。
資本性劣後ローンの「資本性」とは、この融資が資本とみなされることからきています。このことは、次の項目で詳しく説明します。
また、「劣後」とは、「他より後に扱うこと」という意味の言葉です。つまり、「劣後ローン」とは、融資を受けた企業が万一倒産した場合、他の債務や税金の支払いが優先され、資本性劣後ローンの支払いが後回しにされる、ということを意味しています。
つまり、「資本性劣後ローン」とは、受けた融資が資本とみなされ、万一倒産した場合は、最後に回収される融資ということです。
資本性劣後ローンの3つの特徴
資本性劣後ローンは、一般の融資と主に次の3つの点で異なっています。
- 1. 「負債」ではなく「資本」とみなされる
- 2. 返済は、5~20年後に一括で行われ、毎月の返済がない
- 3. 業績によって利率が決定され、業績が赤字の場合には利息負担が軽減される
1. 「負債」ではなく「資本」とみなされる
資本性劣後ローンで融資を受ける場合、貸借対照表上では「負債」として見なされますが、資本性劣後ローンは「自己資本」と見なされます。
資本性劣後ローンによる融資を受けると、自己資本の割合が増え、資金繰りが改善されたとみなされます。そのため、金融機関からさらに融資を受ける場合は、審査に通過しやすくなります。
「状況が厳しいからこそ、新規事業に踏み出したい」と考える事業主は、資本性劣後ローンを利用したのちに、再度追加の融資を申し込むことも検討してください。
2. 返済は、5~20年後に一括で行われ、毎月の返済がない
資本性劣後ローンで融資を受けた場合は、借入期間中は利息の支払いだけが発生し、元金返済の必要がありません。例えば、中小企業向けの新型コロナ対策資本性劣後ローンで融資を受ける場合、融資期間は5年1か月、7年、10年、15年、20年の中から選べます。
通常の融資であれば、毎月、返済に充てるための資金が手元に必要になりますが、資本性劣後ローンで融資を受けた場合は、返済資金が不要になるため、資金繰りにゆとりが生まれます。そのため、一時的に事業が悪化し、資金繰りが厳しくなった企業が経営を安定させたい場合に最適な制度だといえます。
3. 業績によって利率が決定され、業績が赤字の場合には利息負担が軽減される
資本性劣後ローンの金利は1年ごとの事業の業績によって利率が決定されます。業績が赤字の場合は、利息負担が低く抑えられ、返済負担が軽減されます。
また、新型コロナ対策資本性劣後ローンでは、融資後の最初の3年間の利率は業績を問わず0.50%です。通常の融資と比較しても、利息負担が抑えられていることも押さえておきましょう。
資本性劣後ローンのメリット・デメリット
資本性劣後ローンの融資を受ける場合のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
資本性劣後ローンのメリット
資本性劣後ローンのメリットとしては、次の4点があります。
毎月の支払いは利子のみ、返済金が不要
先述の通り、資本性劣後ローンは、借入期間中に元本を分割して返済する必要がありません。毎月の返済負担が軽減されるため、資金繰りが安定します。
貸借対照表で自己資本として計上される
資本性劣後ローンの融資を受けた場合は、貸借対照表では自己資本として計上されます。そのため、自己資本率が上がり、追加の融資を他の金融機関から受ける場合、資金調達がしやすくなります。
業績に応じて利率が調整される
資本性劣後ローンは、毎月利子を返済しなければなりませんが、その利率は業績に応じて毎年調整されます。業績が悪化した場合は金利が低下されるため、返済の負担が軽減します。
無担保・無保証人で申請できる
通常の融資は、担保や保証人が必要ですが、資本性劣後ローンは、担保も保証人もいりません。
資本性劣後ローンの融資のデメリット
資本性劣後ローンの融資を受ける際のデメリットとして、次のものがあります。デメリットを理解し、リスクを回避する方策も合わせて考えましょう。
一括返済しかできない
資本性劣後ローンは返済時に一括で返済する仕組みになっています。借入を資本と考え、利息を配当と比べれば決して高い利息ではありません。そのため、借入期間中に分割支払いによって減らすことができません。計画的な返済計画を立て、返済時に手元資金が大きく減り、返済による資金繰りが悪化しないようにする必要があります。
利率が高い傾向がある
資本性劣後ローンは回収できる可能性が低いため、一般的な融資と比較すると利息が高くなっています。また、赤字の場合は利息の負担が抑えられる反面、事業が順調で黒字になると、金利も高くなり、負担が重くなります。
厳格な審査がある
資本性劣後ローンは、万一、倒産した場合の回収が最後に回されるため、回収できないことも多くあります。回収不能となることを避けるため、融資を申し込んだ際の審査は、他の融資よりも厳しい傾向があります。
新型コロナ対策資本性劣後ローンに注目
新型コロナ対策資本性劣後ローンとは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者に向けて、日本政策金融公庫および商工組合中央金庫において、民間金融機関が融資する資本性劣後ローンのことです。2023年9月に、2024年3 月末まで延長されることが決まりました。
新型コロナ対策資本性劣後ローンについて、重要な4つのポイントについて説明します。
対象者となるのは?
新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用できるのは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人や個人事業主の中で、次の人です。
- J-Startupプログラムに選定された企業や「起業支援ファンド」、「中小企業成長支援ファンド」から出資を受けた人
- 再生支援協議会の関与のもとで事業の再生を行っている人
- 民間金融機関などによる協調支援を受けている人、また、支援を受けていない場合は、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて事業計画を策定する人
3点目に関しては、後述の「資本性劣後ローンはどこに相談すればよい?」で詳しく説明します。
融資限度額は?
中小企業事業者の資金繰り状況などを踏まえ、コロナ融資限度額は10億円から15億円に引き上げられました。
融資期間は?
5年1か月、7年、10年、15年、20年のいずれかで、融資後5年間は期限前返済することができないことに注意してください。
利率は?
融資後3年間は一律で0.50%です。4年目以降も赤字であれば、引き続き0.5%、黒字になれば融資期間によって異なります。5年1か月、10年の期間であれば2.60%、20年の場合は2.95%となります。
いつまで申し込める?
2024年(令和6年)3月末まで利用できます(2023年11月現在)。
あの「chocoZAP(ちょこざっぷ)」も資本性劣後ローンを活用していた
コロナ禍で打撃を受けた業種は数多くありますが、フィットネスジムも例外ではありません。フィットネスジムは2018年をピークに、新型コロナの影響を受けた2020年に急減、以降改善傾向にあるものの、ピーク時には及んでいません。
2023年8月14日、RIZAPグループは、RIZAPの瀬戸健社長の資産管理会社からの資本性劣後ローン(最大55億円)を含む、最大67億5千万円の資金調達を計画していることを発表しました。この調達資金の主な用途は、低料金の24時間セルフ型ジム「chocoZAP(ちょこざっぷ)」への投資資金です。
RIZAPグループは、「ライザップ」が伸び悩む中で、若年層をターゲットに新たな需要を喚起するために、「低料金の24時間型セルフ型ジム「chocoZAP(ちょこざっぷ)」を展開しています。chocoZAPのCMや新店舗を目にした人も多いことでしょう。実際にchocoZAPの会員数は急増し、75万人を突破しています。
資本性劣後ローンはどこに相談すればよい?
先述のように、資本性劣後ローンを申請できる対象者である3点のうち、ほとんどの中小企業が該当するのは3点目の「民間金融機関などによる協調支援を受けている人、また、支援を受けていない場合は、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて事業計画を策定する人」でしょう。
そのなかでも「民間金融機関などによる協調支援を受けて」いない事業者が相談できる先として、次の3つがあります。
- 顧問税理士
- 取引先の金融機関
- 中小企業庁による認定支援機関
認定支援機関の支援を受けることで、自社の事業内容を的確に反映した事業計画書を作成することができます。日本政策金融公庫・商工組合中央金庫に適切と評価される事業計画書を作成するためには、自社をよく知る認定支援機関と相談することで、大きく前進します。専門家の助けを借りることで、スムーズな申請を行いましょう。
まとめ
今回は、資本性劣後ローンおよびコロナ対策資本性劣後ローンについて説明しました。資本性劣後ローンは、自己資本とみなされ、また、融資期間中は元金返済の必要がないなど、普通の融資とは異なるメリットがありますが、反面、借入金は一括で返済しなければならないなどのリスクもあります。そのため、経営全体の状況とあわせて専門家と相談しながら進めることで、最適な形での借入計画立てることができます。
コロナ禍で資金繰りに悩む事業者の方は、資本性劣後ローンやコロナ対策資本性劣後ローンの経験豊富な認定支援機関あすかタックス&コンサルティングにお問い合わせください。
代表 石井 輝光
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