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中小企業こそ少人数私募債で資金調達しよう!
企業の資金調達には、融資や補助金・助成金のほかに、少人数私募債の発行があります。少人数私募債は1991年に商法改正を受けて、社債発行条件が緩和されたのを機に発行が認められるようになった、比較的歴史の浅い資金調達方法です。
少ないコストで簡単に社債が発行できるため、徐々に知られるようになってきましたが、資金調達の手段としては、まだ完全に定着はしていません。
本記事では少人数私募債について基礎的な知識を説明し、そのメリットとデメリットを紹介します。少人数私募債を資金調達の候補として検討してください。
私募債の基礎知識
私募債とは、企業の資金調達のために発行される社債の一種です。まず、この「社債とは何か」を整理しておきましょう。
社債と株式の違い
企業が投資家から資金を調達するために発行されるものとして社債と株式があります。ともに有価証券ですが、次のような違いがあります。
社債 | 株式 | |
---|---|---|
発行の目的 | 投資家から資金を借りる | 投資家から出資を募る |
返済義務 |
返済義務あり 利息を支払いつつ返済を行う |
返済義務はない 出資者は配当金やキャピタルゲインを得る |
経営参加権 | 社債保有者は経営に参加できない | 株主は経営に参加する権利を持つ |
この表のとおり、社債は企業が直接、投資家からお金を借りるものであるため、貸借対照表上は負債となります。また、期限があらかじめ決められている銀行からの借入とは異なり、返済方法は企業の側がある程度は自由に決めることができます。
公募債と私募債の違い
さらに、社債には公募債と私募債があります。それぞれの違いを見ておきましょう。
公募債 |
私募債 | |
---|---|---|
種類 |
|
|
募集人数 | 制限なし |
|
発行市場 | 公開市場・証券取引所で売買 | 非公開市場 |
規模 | 大規模な資金調達が可能 | 比較的小規模な資金調達 |
特徴 | 金融商品販売法の適用を受ける | 担保不要で柔軟な条件が設定できる |
公募債とは、証券取引所で公開され不特定多数の投資家向けに発行されるのに対し、私募債は証券会社を通すことなく直接募集するものです。対象となるのも、公募債が一般の投資家であるのに対し、私募債は種類によって対象とする相手が異なります。
私募債は公開で募集するために投資家の人数が限られ、資金調達として集める金額は公募債に比べて少額になりますが、担保不要で柔軟な条件で返済が可能という違いがあります。
少人数私募債とは
少人数私募債とは、50人未満の少人数に対して会社が募集し発行する債券です。私募債の一種である少人数私募債について見ておきましょう。
少人数私募債発行の条件
少人数私募債を発行するには、いくつかの条件があります。
法人であること
少人数私募債は、法人格の「会社」であることが条件で、個人事業者は発行することができません。
勧誘対象者は縁故者50人未満であること
少人数私募債は、プロの投資家を勧誘することはできません。経営者の身内や知人、従業員、取引先など縁故者に対して、勧誘の声掛け者が通算3か月で50人未満であることが条件となっています。
社債の発行総額が社債の一口額面の50倍未満であること
例えば、社債の額面が100万円の場合は、発行総額が5,000万円未満であることが条件です。また、発行総額は一般に「1億円未満」とされています。これは、1億円を超えた場合は金融商品取引法によってさまざまな手続きが必要となるためです。少人数私募債のメリットのひとつである「手続きが簡単」を活かすためにも、1億円未満(一口額面200万円未満)で募集した方が良いでしょう。
少人数私募債発行に必要なもの
少人数私募債を発行するにあたって必要な書類として、事業計画書と募集要項があります。
事業計画書
社債の購入者に説明し納得してもらうために、事業計画書を作成します。事業計画書には次のことを盛り込むようにします。
- ①なぜ資金が必要なのか
- ②その資金はどのように活かされるのか
- ③事業はどのように展開するのか
- ④結果として会社の業績はどうなるのか
募集要項
募集要項には主に次のことを記載します
- ①社債募集総額
- ②社債の金額(一口額面)
- ③社債の利率(一般的には年率2%~5%)
- ④社債償還の期限(一般的には2年~7年)
- ⑤利息支払いの方法と期限
- ⑥第三者への譲渡を制限すること(取得者から多くの人に譲渡され、50名を超えることがないようにする)
少人数私募債のメリット・デメリット
少人数私募債のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
少人数私募債のメリット
少人数私募債には主に以下の5つのメリットがあります。
1. 発行手続きが簡単
手続きに必要な書類が限られており、実務的にも大変なものではありません。そのため、発行までの期間も最短で2週間程度で可能です。
2. 担保がなくても発行できる
担保や保証人の必要はありません。
3. 長期、固定金利で安定的に資金調達できる
少人数私募債は、償還までの期間、固定金利となります。そのため発行することで、企業は長期間、固定金利で安定的に資金調達できるため、資金計画を立てやすくなります。
4. 融資審査が不要
金融機関からの借入時のような審査は不要です。銀行融資などが通りにくい中小企業にとって、審査不要は大きなメリットとなります。ただし、少人数私募債を勧誘する人に対して説明する必要はあり、そのための資料も必要になります。
5. 企業のイメージアップにつながる
社債を購入した人の存在は、企業の信用力の証明になります。さらに、重要な取引先が購入してくれたのであれば、今後の関係性においても良い影響が期待できます。また、社員の購入は社員に信頼されている企業であることを広くアピールすることにもつながります。
少人数私募債のデメリット
反面、少人数私募債にもデメリットはあります。代表的なデメリットを理解しておきましょう。
1. 元本の一括償還が必要となる
少人数私募債では、元本を分割して定期的に償還することはできません。あらかじめ決めた償還日に一括償還が求められます。そのため、場合によっては償還時期の資金繰りを圧迫する可能性があります。長期的な資金計画を立てておくことが必要です。
2. 償還期限の延長ができない
同様に、償還期限を延長することもできません。銀行融資などであれば「リスケジュール(リスケ)」を依頼することもできますが、私募債は償還日に一括償還の決まりがあるため、私募債を募集する場合は資金管理を入念に行っておかなければなりません。
3. 引受人が集まらないと資金も集まらない
企業の財政状態が悪かったり、企業の経営方針や製品に魅力が感じられなかったりすると、引受人が集まらない可能性があります。それは、引受人にとっても社債を購入するメリットが感じられなくなるためです。引受人が集まらないと、仮に社債を発行しても資金は集まりません。
上記のようなリスクを回避し、少人数私募債を活用して資金調達をスムーズに進めるためには、税理士や会計士、コンサルタントなど、専門家の助けを借りることが重要です。信頼のおける専門家と相談しながら進めましょう。
まとめ
本記事では、銀行融資によらない資金調達のひとつである「少人数私募債」について、あすかタックス&コンサルティングが解説しました。
少人数私募債は、担保も保証人も不要で、償還期間や利率が自由に設定でき、手続きも簡略化できる、初めてでも実行しやすい債権です。合計金額が1億円未満と、多額の資金を調達するには向きませんが、無担保・融資審査不要など、調達がしやすく、企業のイメージアップにつながるなど、他の調達方法にはないメリットもあります。
しかし、手続きが簡単といっても、スムーズに進めるためにはプロの手を借りることも重要です。少人数私募債に興味を持たれた経営者は、ぜひ無料相談をご利用ください。
代表 石井 輝光
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