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銀行融資で利用される「格付け」を上げる方法
2021年に実施された中小企業を対象にした経済産業省の調査によると、55%の企業が資金調達を行っています。さらに、資金調達の方法としては、93.6%が銀行や信用組合などの金融機関からの借入れでした。資金不足に悩む中小企業が半数を超え、銀行融資はそうした中小企業にとっての最有力の資金調達先であることがわかります。
しかし、銀行に融資を申し込んでも、問題なくお金を借りられる企業もあれば、なかなか借りられない企業もあるのが実情です。企業によって、金利など貸出条件にも差があります。なぜ、企業によって借りやすさに違いが出てくるのでしょうか?
それは、企業は銀行によってランク付けされており、このランクに基づいて融資が行われるかどうか、また利息などの貸付条件が決まるからです。「格付け」とは、このランク付けのことです。
銀行融資をスムーズに進めるために、また少しでも良い条件で融資を受けるために、「格付け」の仕組みを理解し、少しでも良い格付けにしておくことが重要です。本記事の説明を通して「格付け」の意味や、どうやって決まるのか、また、企業が格付けを上げる方法を理解しておきましょう。
銀行融資で利用される「格付け」とは
「格付け」とは、企業の財務状況や過去の取引を元に、銀行が査定した企業の信用ランクのことをいいます。
銀行は、融資した資金が返済されなくなること(「貸し倒れ」)を最も恐れます。そのため、その企業が返済できるかどうかを厳しく判断します。その判断の根拠となるのが企業の「格付け」です。
銀行が「格付け」を行う目的
銀行が企業に対して「格付け」する目的を整理しておきましょう。
与信判断の基準
銀行は企業に融資を行う際、その企業の債務返済能力を評価する必要があります。格付けはその重要な判断材料となります。格付けが高ければ、与信リスクが低いと見なされ、融資の対象と認められます。
貸付条件の設定
格付けに応じて、企業に対する融資限度額や貸出金利が決定されます。そのため、格付けが高い企業には希望する融資額が認められるとともに低金利が適用され、格付けが低い企業には希望融資額が認められないことも多いです。また、金利も高くなる傾向があります。
債務者区分と格付けの例
銀行の格付け体系は、銀行ごとに独自のもので非公開ですが、一般的には融資先を5つの「債務者区分」に分類し、これを元に10前後のランクに振り分けられます。
【債務者区分と格付けの例】
1. 正常先
財務内容に問題がない状態で、融資の返済も滞りなく行われている企業
格付け:1~6
2. 要注意先
業績が不調であり、財務状態に問題がある状態で、融資の返済に短期の延滞がある企業
格付け:7
3. 破綻懸念先
経営難に陥っており、経営改善計画なども進捗しておらず、融資の返済に長期の延滞がある。今後破綻の可能性が高い企業
格付け:8
4. 実質破綻先
深刻な経営難に陥っており、再建の見通しが立っていない企業
格付け:9
5. 破綻先
破産開始手続きを行っている会社
格付け:10
企業が融資を受けるには、債務者区分が「正常先」であることが必要です。ここから「正常先」とみなされる格付け1~6について、財務内容の水準や返済状況について見ておきましょう。
【格付け1~6の水準】
格付け | 財務内容の水準 |
---|---|
1 | 財務内容が優れており、融資の返済の見込みが最も高い |
2 | 財務内容は良好で、融資の返済の見込みは高いが、事業環境が大きく変化した場合は、確実性が低下する可能性がある |
3 | 財務内容は問題なく、融資の返済も当面問題はないが、事業環境が変化した場合は、確実性が低下する可能性がある |
4 | 財務内容は問題なく、融資の返済も当面問題はないが、事業環境が変化した場合は、確実性が低下する恐れがやや大きい |
5 | 財務内容は問題なく、融資の返済も当面問題はないが、事業環境が変化した場合は、返済能力が損なわれる要素がある |
6 | 財務内容は現在のところ問題はなく、 返済も問題なく行われているが、業況推移に注意を要する |
銀行が企業を格付けする方法
格付けは、一般的に「定量評価」と「定性評価」の2種類によって評価されます。定量評価とは、決算書の数値に基づく評価で、定性評価とは、決算書の数値には現れない評価ポイントによるものです。
定量評価
銀行は、企業から出された決算書を元に、次の4点の指標で格付けを行います。
安定性
「安定性」とは、企業が安定して事業を継続できるかどうかを見る指標です。安定性は、主に次の3点で評価されます。
- → 自己資本比率…倒産しにくい、安全な企業かどうかを見るために、銀行が重視する指標です。
-
自己資本比率=純資産÷総資産×100(%)
一般的には40%を超えていることが望ましいとされます。 - → 流動比率…1年以内に返済しなければならない借入金に対して、1年以内に現金化できる資産をどれだけもっているかを示す指標です。
-
流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)
一般的には200%を超えていることが望ましいとされます。 - → 当座比率…1年以内に返済しなければならない借入金に対して、すぐに現金化できる資産をどれだけもっているかを示す指標です。
-
当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)
一般的には100%を超えていることが望ましいとされます。
収益性
「収益性」とは、企業がどれだけ収益を上げられるか、より少ない資本で効率的に収益を上げることができるかを表す指標です。収益性は、売上高経常利益率、総資産経常利益率(ROA)で評価されます。
- → 売上高経常利益率…売上高に対する経常利益の割合で、企業の収益性を計る目安として用いられます。
-
売上高経常利益率=形状利益÷売上高×100(%)
一般的には4.0%以上で優良、3.0%以上で良好とされます。0%以上であれば普通とされますが、0%を下回ると懸念材料とみなされます。 - → 総資産経常利益率…企業が投下した資本を効率よく使って利益をあげているかどうかが示される指標です。Return on Assetsの頭文字を取ってROAと呼ばれることもあります。
-
総資産経常利益率=経常利益÷総資産×100(%)
一般的にROAは5%以上の企業が優良とされますが、製造業のように大規模な設備投資が必要な業種では、業界平均がマイナスになるようなケースもあるため、業界ごとの比較が必要です。
成長性
成長性とは、企業がどれだけ成長しているかを示す指標です。活動期間ごとにどれだけ売上高や経常利益が上昇しているのかを判断します。成長性は、売上高増加率と経常利益増加率で示されます。
- → 売上高増加率…前期と比較して、売上高がどれだけ伸長しているかを判断する指標です。
-
売上高増加率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100(%)
一般的には6%以上が優良、0~5%が安全水準、マイナスになると危険だとされています。 - → 経常利益増加率…前期と比較して、経常利益がどれだけ伸長しているかを判断する指標です。
-
経常利益増加率=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100(%)
一般的には経常利益増加率の目安は4%といわれており、10%以上であれば超優良とされています。
返済能力
返済能力とは、融資を受けた後に返済ができる資金力の有無を判断する指標です。インタレスト・カバレッジ・レシオと債務償還年数で示されます。
- → インタレスト・カバレッジ・レシオ…企業が借入金の利息(インタレスト)をどの程度余裕をもって支払えるかどうかを示す指標です。
-
インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷支払利息
一般的にインタレスト・カバレッジ・レシオは倍率が高いほど安全ですが、2.0以下で注意、1.0を割り込むと、利益で利息が払えない状況に陥ります。 - → 債務償還年数…借入金を返済するまでにかかる年数を示す指標です。この数値が大きいことは 債務償還年数が長いことを意味し、評価が悪くなります。
-
債務償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)(年)
一般的には3年以内で優良、10年以内で普通、20年を超えると危険とされます。
定性評価
定性評価は数字で表すことのできない評価です。都市銀行は定量評価を重視しており、定性評価をほとんど格付けに反映させないところが多いのですが、地方銀行や信用金庫、信用組合は、定性評価も含めて格付けを行うところが多いといわれています。
定性評価では、経営陣の経験や実績、企業の経営方針、戦略などのほか、企業が属する業界の動向や競争状況などの要素を総合的に評価して、企業に信用格付けが与えられます。
ズバリ、格付けを上げる方法
格付けが高いほど、企業の信用力が高いと見なされ、より有利な融資条件が提供されます。そのために、格付けを上げる方法を検討しましょう。格付けを上げるには、以下の6つの方法を検討してください。
1. 財務状況を改善する
格付けを上げるために最初にすべきことは、財務状況を改善し、経営を安定させることが重要です。定量評価を上げるために、自己資本率を高めること、収益性の向上、負債の削減、キャッシュフローの改善などを検討しましょう。
2. 企業の信頼性を向上させる
融資を依頼するのが地方銀行や信用金庫、信用組合である場合は、定性評価を上げることも重要です。企業や経営者の信頼性を高めるために、経営理念や経営方針を明確に打ち出し、社内外の信頼性を高めるようにしましょう。また、銀行に対しては毎期の決算書とともに経営計画を金融機関に提出し、今後の見通しを説明しましょう。こうした誠実なコミュニケーションを通して、銀行からの信頼を高めましょう。
3. 成長戦略を策定する
成長戦略を立案し、市場シェアの拡大や新規事業の開拓、商品開発などを積極的に進めましょう。企業の成長性は、格付け向上の大きな要因となります。
4. 専門家の助言を活用する
上記3つの策を実効性のあるものにするために、税理士や会計士、ビジネスコンサルタントなどの専門家の助言を受けることが重要です。信頼できる専門家の助けを借りながら、格付け向上のための具体的な戦略を立てましょう。
まとめ
本記事では、銀行融資で利用される「格付け」について、あすかタックス&コンサルティングが解説しました。銀行融資を申し込んだ際に、融資が通るかどうか、また融資額や利率などが決まる上で、決定的な役割を果たすのが格付けです。格付けは、決算書の数字を元に決まるため、自己資本率や収益性を上げることが重要になってきます。
また、格付けをアップさせるには、プロの手を借りることも重要です。あすかタックス&コンサルティングは、これまで多くの中小企業の財務状況を改善することを通して、格付けを引き上げるお手伝いを行ってきました。格付けが低くて、良い条件で銀行融資が受けられないとお悩みの経営者は、ぜひ無料相談をご利用ください。
代表 石井 輝光
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