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税務署に否認されない不動産管理料の決め方
不動産投資を行っている人にとって、節税対策は重要な課題です。自分が所有する不動産を効果的に管理しながら節税を図る方法のひとつに、不動産管理会社を設立し、不動産会社が管理料を徴収するというやり方があります。
管理料には家賃の何%という規定がないため、管理料を高くすればするほど、節税効果があります。しかし、税務署に認められないような不動産管理料を設定してしまうと、税務調査で問題が発生しかねません。この記事では、不動産管理会社が節税になる理由を押さえた上で、管理料の仕組みを理解し、さらに税務署に否認されない適正な不動産管理料の決め方について詳しく解説します。
不動産管理会社が節税になる理由
不動産管理会社を設立すると節税になる主な理由については、様々な要因が絡み合っています。5つの主な理由を紹介します。
1. 税率の違い
不動産会社を設立せず、個人事業主として不動産投資を行った場合は、本業の所得など、他の所得と合算して課税の対象となります。このとき、課税所得が増えるにつれて税率も高くなる累進課税が適用されます。
一方、不動産管理会社を設立した場合、不動産から上がる利益には法人税が適用されます。法人税は法人全体の所得に対して一定の税率が適用されます。個人事業主のように所得が増えるほど税率が上がることはありません。
そのため、個人の所得税率が法人税を超える可能性がある場合、不動産管理会社の設立を検討することをお勧めします。
2. 経費の範囲
不動産管理会社を活用すれば、経費として計上できる項目が増えるため、税負担を軽減することができます。例えば、自宅を法人名義で「社宅」として借りることで、家賃の一部を経費とすることができます。
また、不動産管理会社を設立し、法人化することで、減価償却の計上額をある程度まで自由に決定することができます。例えば、初期に大きな減価償却費を計上することで、利益を圧縮し、税金を減らすことができます。逆に、減価償却費を設定せず、取得時と売却時の金額の差を少なくし、売却益を圧縮することもできます。
3. 欠損金の繰越
個人事業主の場合、欠損金の繰越期間は3年であるのに対し、法人では、繰越期間が10年設定されています。そのため、赤字となった場合の欠損金を10年間繰越して、赤字分が解消するまで、黒字と相殺することができます。
4. 相続税の節税
個人事業主の場合、死亡時に不動産は相続人へと引き継がれ、相続人が相続税を支払います。一方、法人が所有する不動産は、代表者が亡くなった場合でも、不動産の所有は変わりません。そのため、相続税が発生せず、節税につながります。
5. 所得分散
家族で不動産経営をしている場合、役員報酬を分散させることで、各人が給与所得控除を受けることができ、節税効果を高めることができます。
※不動産管理会社を設立することで、上記のような節税効果が期待できます。しかし、かならずしもすべてのケースに節税効果があるわけではありません。不動産会社設立を検討する場合、最初に税理士などの専門家に相談し、自身の状況に合わせた最適な方法を見つけることをおすすめします。
不動産管理料の算定方法
節税対策として不動産管理会社を設立した場合の「不動産管理料」は、一般に個人所有の不動産を管理会社に賃貸し、その対価として支払われる金額を指します。ここでは管理料の基本的な情報を整理し、実際の算定法と計算例を説明します。
不動産管理料とは?
節税目的で不動産管理会社を設立した場合、「管理委託方式」「不動産保有方式」「一括転貸方式(サブリース方式)」の3つの業態があります。
このうち、不動産管理料が発生するのは「管理委託方式」と「一括転貸方式(サブリース方式)」です。
管理委託方式での管理料
管理委託方式では、不動産オーナーが不動産管理会社に管理を委託し、管理料を支払います。それにより、不動産オーナーは、管理料を経費として計上できるため、節税効果が期待できます。
【管理委託方式の模式図】
一括転貸方式(サブリース方式)での管理料
一括転貸方式では、不動産オーナーが不動産管理会社に管理をすべて任せ、不動産管理会社が借家人と賃貸借契約を結ぶという業態です。不動産管理会社は、家賃を受け取り、その一部を不動産オーナーに支払います。
不動産管理会社から不動産オーナーに支払われる賃料は、不動産管理会社が得る家賃より少なく(85~95%程度)設定します。この差額(15~5%)が管理料としての意味合いを持つことになります。
3つの業務形態については次の記事で説明していますので、ぜひ参考にしてください。
>> 不動産オーナーは不動産管理会社を設立して節税しよう
不動産管理料の決め方
「節税を考えるなら、管理料を高くすればするほど良いのではないか?」と思うかもしれません。しかし、適正な管理料を逸脱すると、税務調査で管理費が高額すぎると判断され、全額否認されたという例もあります。そのため、管理料の設定には、十分な注意が必要です。
不動産管理料を決める際には、業界の一般的な相場を参考にすることが重要です。
管理委託方式での管理料の相場
不動産管理会社に支払う管理料は、賃料の5%〜10%が相場とされています。しかし、所有する物件の規模や管理にかかる実際のコストに応じて、適正な金額を設定する必要があります。たとえば、管理業務の範囲が広範囲にわたる場合は、相場以上の管理料を設定することも許されますが、その際には詳細な根拠が求められます。
一括転貸方式(サブリース方式)での管理料の相場
一括転貸方式による場合、不動産管理会社が空室などの経営リスクを負うことになるため、管理委託方式よりも多くの賃料を不動産管理会社に移転することができます。そのため、管理料は家賃の10%~20%が相場とされています。
不動産管理料の具体的な計算例
実際の賃料を元に、管理料の算出の仕方を見てみましょう。
賃料が月額100万円の不動産の場合
【管理委託方式の場合】
管理料を5%に設定したとします。
100万円×5%=5万円(月額)
この5万円が管理料となります。
【一括転貸方式の場合】
不動産管理会社から不動産オーナーに支払う賃料を家賃の90%に設定したとします。
100万円×90%=9万円(月額)
この9万円が管理料となります。
※実際には管理業務に必要な人件費やその他のコストを加味して、より正確な金額を算出します。
税務署に否認されない管理料のギリギリライン
税務署は、不動産管理料が市場価格や実際の業務内容に見合ったものであるかを厳しくチェックします。過度に高い管理料を設定すると、「同族会社の行為計算の否認」という規定を税務署が使うことになり、「高額管理費」の認定を受け、所得税の修正申告をしなければならなくなります。
反面、管理料を安くしすぎると、不動産管理会社を設立するメリットがなくなってしまいます。そのため、管理料を設定する時は、そのギリギリのラインを見極めておかなければなりません。
一般的には、管理委託方式であれば賃料の8%以内、一括転貸方式の場合は賃料の15%以内をひとつの目安としつつ、管理業務の内容とその費用が適切に反映された金額を設定することが重要です。
否認されないための対策
否認されないための対策として、次の4点を理解しておきましょう。
1. 契約書の内容を整備する
不動産管理会社としっかりとした契約書を作成し、業務内容や管理料の算定根拠を明確にしておくことが重要です。
2. 近隣の不動産管理会社の相場を調べる
近隣の管理料相場をリサーチし、その範囲内で設定することがリスクを減らします。市中の不動産会社などを自分で調べてみましょう。
3. 業務実態を証明する
不動産管理会社が実際に業務を行っていることを証明できるように、毎日のように管理物件に出向き、掃除などを行っていることを明確にできるように、日報などを作成して保管することが重要です。
4. 契約書の内容は専門家に依頼する
実効力のある適正な契約書にするために、作成した契約書の内容に関しては、税理士やコンサルタントなどの専門家にかならずチェックしてもらいましょう。
まとめ
本記事では、不動産管理会社設立を検討しておられる方、特に、管理業務の導入が比較的簡単な管理委託方式の導入を検討しておられる方、また、管理委託方式の導入を実際に進めておられる方に向けて、税務署に否認されない管理料の設定方法をさまざまな角度から、あすかタックス&コンサルティングが解説しました。
管理委託方式では、節税の面などで管理料の設定が非常に重要になってきます。法律で一律に決まっているわけではないので、家賃だけでなくさまざまな条件を考慮して決めていかなければなりません。また、税務署に否認されないためには、契約書の作成なども必要となってきます。不動産管理料の設定に関しては、税理士やコンサルタントなどの専門家と相談しながら、慎重に検討することが重要です。
あすかタックス&コンサルティングは不動産経営で安定した収入を希望される多くの方々のお手伝いをしてきました。不動産管理料の設定に興味を持たれた方、また不動産投資をもっと詳しく知りたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。
代表 石井 輝光
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