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サブリース契約は本当に安全?オーナーが知るべきデメリットと対処法

空室リスクを軽減できるとされ、初心者にも人気の「サブリース契約」。不動産会社に一括で貸し出し、安定した家賃収入が得られるというメリットが注目されます。しかし、「本当に安全なのか?」「契約後にトラブルが発生することはないのか?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2024年の法改正による影響も踏まえつつ、サブリース契約の仕組みと、知っておくべきデメリット・その対処法についてわかりやすく解説します。
そもそもサブリース契約とは?
サブリース契約とは、不動産オーナー(貸主)が所有する物件を不動産会社(サブリース会社)に一括して貸し出し、サブリース会社がその物件を入居者に又貸し(転貸)する契約形態です。オーナーは空室の有無にかかわらず、毎月固定の賃料を受け取ることができるため、「安定収入が得られる仕組み」として人気があります。
サブリース契約のメリット・デメリット
人気がある反面、サブリース契約の問題点を指摘する声もあります。ここではサブリース契約のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
サブリース契約のメリット
サブリース契約には、主に2点のメリットがあります。
1. 空室リスクを軽減できる
賃貸オーナーにとって、空室リスクは最大のリスクと言われています。所有する物件に入居者が入らなければ、家賃収入がゼロとなってしまうからです。一方、ローンを始めとした経費は確実にかかってきますから、支出ばかりが増え、不動産経営は大きく圧迫されてしまいます。
しかし、サブリース契約を結んでいると、たとえ空室が続いたとしても、サブリース会社から「一定の保証賃料」が支払われます。
このことを、事例に即して見てみましょう。
【事例】
不動産投資を始めたAさんは、賃貸管理会社とサブリース契約を結びました。契約では、所有する家賃8万円の物件をサブリース契約に出し、保証賃料として毎月6万円を受け取る、という取り決めです。これにより、所有する物件の入居者がいない「空室」期間がどれだけ続いても、Aさんは毎月、6万円を受け取ることができます。
これは、特に不動産投資を始めたばかりのオーナーにとって「毎月の収支の見通しが立ちやすい」という大きな安心材料になります。
2. 面倒な管理業務を任せられる
不動産経営には、入居者の募集、クレーム対応、家賃の回収、設備の修理対応など、さまざまな管理業務があります。
この管理業務については
- ① すべて自分でやる
- ② 一部またはすべてを管理業者に委託する
- ③ サブリース契約で全面的にサブリース会社に代行してもらう
の3つのやり方があります。
ともに物件オーナーが管理業務にタッチしない管理委託とサブリース契約ですが、この2つはどこが異なっているのでしょうか?
管理委託では、物件所有者であるAさんと、入居者であるBさんが直接、契約します。BさんはAさんに家賃を支払います。Aさんはその家賃収入の中から、管理会社に管理業務の手数料を支払います。Aさんと管理会社の契約は、通常1年から2年で、契約期間が過ぎたら更新、または解約されます。
一方、サブリース契約では、サブリース会社が物件をAさんから借り受ける形態になります。そのため、入居者募集から通常の業務まで、サブリース会社がすべて代行してくれるため、オーナーは実質的に何もしなくても家賃が入る形になります。契約期間は一般的に10年以上が多く、更新時に条件などの見直しが行われることになります。
特に会社員などで忙しい方や、遠方の物件を所有する方にとっては、サブリース契約の「手のかからなさ」は大きなメリットです。
また、不動産管理会社に委託する場合でも、管理会社に全面委託するだけでなく、家賃回収や修繕手配などの専門的な業務だけを委託し、費用を抑えながら管理業務を行うやり方もあります。
不動産管理業務にはどのようなものがあるかについては、次の記事で詳しく説明しているので、こちらもあわせて参考にしてください。
サブリース契約のデメリット
サブリース契約の主なデメリットは、次の4点があります。
1. 賃料が相場より低く設定されることがある
サブリース会社は、オーナーから物件を借りて、そこに入居者をつけて利益を出します。そのため、オーナーに支払われる賃料(保証賃料)は、実際の入居者から取る家賃よりも低く設定されるのが一般的です。
上記の事例1では、オーナーのAさんは、入居者の家賃が8万円であっても、6万円しか受け取れません。サブリース業者は、家賃の10%~20%を手数料として設定することが一般的です。
つまり、常時、満室が期待できる物件であれば、サブリース、実は損なのでは?という状況が起こり得るのです。
2. 賃料が途中で下がる可能性がある
サブリース契約を結んだ当初は「毎月〇万円を保証します」と言われても、契約更新のタイミングなどで「今後は〇万円に下げさせてください」と通知されることもあります。
特に築年数が古くなったり、周辺の賃貸需要が落ちてきたりすると、サブリース会社から保証料の引き下げを打診される可能性があるのです。サブリース契約は、最初の条件がずっと続くとは限らないことを覚えておきましょう。
3. オーナー側から解約しづらいケースが多い
サブリース契約は、多くの場合「長期契約」です。そしてオーナー側から解約しようとすると、「解約は6ヶ月以上前の通知が必要」「違約金が発生する」といった厳しい条件がついていることもあります。
実際に、物件の運営状態を見て「他の管理会社に変更したい」、「自分で管理運営したい」と思っても、すぐには状況を変えることも簡単ではありません。契約書をよく確認しないまま契約すると、自由に運用できなくなるリスクがあります。
4. 入居者とのやり取りができない
入居者はサブリース会社と契約するため、オーナーが入居者と直接話すことは基本的にありません。たとえば「部屋の使い方に問題がある」「家賃滞納が心配」と感じても、自分では対応できないのです。
そのため、物件の管理方針がサブリース会社任せになりすぎるのが不安と感じるオーナーもいます。
【サブリースのメリット・デメリット】
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
家賃 | 空室でも保証あり | 相場より安い/減額される可能性 |
管理 | 手間いらず | コントロールが効かない |
解約 | 基本的に長期契約 | 一方的な解約が困難 |
入居者 | トラブル対応を任せられる | 関与できない不安 |
賃貸住宅管理業法改正でサブリースはどう変わった?
2021年(令和3年)に本格施行された賃貸住宅管理業法の改正、そしてそれに続くガイドラインや運用指針の細かな改正は、不動産投資初心者にとって特に重要な変更点を含んでいます。サブリース契約を取り巻く環境がどのように変わり、それが賃貸オーナーにどのような影響を与えるのかを、具体的に見ていきましょう。
この法改正は、サブリース契約における事業者とオーナー間の情報格差を是正し、より公平な取引を実現することを目的としています。過去には、サブリース契約を巡るトラブルが少なくなかったため、消費者を保護する観点から法規制が強化されました。
具体的には、以下の2つのポイントが大きく変わりました。
1. 勧誘時の誇大広告の禁止と情報提供の厳格化
以前は、「家賃保証を一生涯続けます」「空室リスクはゼロです」といった、現実離れした甘い言葉でサブリース契約を勧誘するケースが見受けられました。しかし、賃貸住宅管理業法の改正により、実態に合わない誇大な広告や説明は明確に禁止されました。
サブリース業者は、契約を勧誘する際、以下の情報を正確に提供することが義務付けられるようになっています。
- 家賃保証の範囲と条件: 例えば、「2年ごとに家賃の見直しがあります」「一定期間を過ぎると家賃が減額される可能性があります」といった、保証の具体的な内容と条件を明確に伝える必要があります。
- 契約解除の条件: オーナー側から契約を解除できる条件や、サブリース業者側から契約を解除される可能性のある条件なども説明されます。
- 免責事項: 地震や火災などの不可抗力によって家賃保証ができない場合の条件なども開示されます。
これにより、初心者のオーナーでも、サブリース契約のメリットだけでなく、潜在的なリスクも理解した上で検討できるようになりました。
2. 重要事項説明の義務化と書面交付
サブリース契約を締結する前に、サブリース業者はオーナーに対して重要事項説明をすることが義務付けられました。そして、その説明内容を記載した書面を交付することも義務付けられています。
この重要事項説明では、特に以下の点について詳細な説明が行われます。
- 賃料減額のリスクと条件: サブリース契約では、一定期間ごとに家賃の見直しが行われるのが一般的です。市場の状況や建物の老朽化などにより、将来的に家賃が減額される可能性があること、そしてその判断基準や条件について詳しく説明されます。
- 契約期間と更新: 契約の期間、そして更新時の条件や家賃の見直し方法などが説明されます。
- 契約解除の条件: オーナー側・サブリース業者側双方からの契約解除に関する具体的な条件や手続きが明示されます。
- サブリース業者の役割と責任: 賃貸管理業務の範囲、修繕費用の負担区分など、サブリース業者が負う責任についても詳細に説明されます。
これらの情報が書面で交付されることで、オーナーは契約内容を十分に理解し、後から「聞いていなかった」という事態を防ぐことができます。
この法改正により、サブリース契約の透明性は格段に高まりました。サブリース業者は、より正確で詳細な情報を提供する責任を負うことになります。その一方で、オーナー側にも契約内容をしっかりと確認する責任がこれまで以上に求められます。交付された重要事項説明書や契約書は隅々まで読み込み、不明な点があれば必ず質問して納得のいくまで確認することが重要です。
サブリース契約を結ぶ前に確認すべきポイント
これまで見てきたように、サブリース契約には「空室リスク」を軽減するという大きなメリットがある反面、いくつかの深刻なデメリットも存在します。
こうしたデメリットに対処するためには、契約前に以下のチェックポイントをしっかり確認してください。そして、納得できない点は、サブリース会社と徹底的に話し合うことが重要です。
チェックポイント1:家賃設定の根拠は何か?
サブリース会社が提案する家賃が、周辺の似たような物件の家賃相場と比べて極端に低くないかを確認しましょう。例えば、同じエリアにある同程度の築年数、広さ、間取りの物件が月10万円で貸し出されているのに、自分の物件のサブリース家賃が月8万円と提示された場合、なぜその金額になるのか明確な説明を求めましょう。不当に低い家賃設定は、収益を圧迫するだけでなく、将来的な資産価値にも影響を与える可能性があります。
チェックポイント2:契約期間と中途解約の条件は?
サブリース契約には通常、数年間の契約期間が定められています。その期間中に、何らかの理由で契約を途中で解除したい場合、あるいはサブリース会社から契約を解除される場合、どのような条件が適用されるのかを細かく確認しましょう。特に重要なのは違約金の有無と内容です。例えば、「〇ヶ月分の家賃相当額の違約金が発生する」といった条項がないか、また、オーナー側からの解約が極めて困難な条件になっていないかなどをしっかり確認してください。
チェックポイント3:賃料改定の条件は明確か?
サブリース契約では、契約期間中に家賃が見直されることが一般的です。これは、市場の変動や建物の老朽化などに応じて家賃が変動する可能性があるためです。「何年ごとに見直されるのか(例:2年ごと、5年ごと)」、そして「改定の基準は何か(例:周辺相場、物価変動率)」など、家賃改定に関するルールが契約書に具体的に明記されているかを確認しましょう。あいまいな表現の場合、将来的にサブリース会社から不利な家賃減額を求められるリスクがあります。
チェックポイント4:管理内容と責任の範囲
サブリース契約では、サブリース会社がオーナーの物件の賃貸管理を行うことになります。具体的にどこまでの管理業務をサブリース会社が担当してくれるのかを明確に把握しておくことが重要です。例えば、新しい入居者の募集活動、入居者からの問い合わせ対応、家賃の集金、設備の故障時の修繕手配、共用部分の清掃など、どの範囲までがサブリース会社の責任で行われるのかを確認しましょう。また、修繕費用が発生した場合のオーナーとサブリース会社それぞれの負担割合についても、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
不動産投資を始めたばかりの人では、上記の点を始め、よくわからないポイントもあるかもしれません。その場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、アドバイスをもらってください。
まとめ
この記事では、サブリース契約について、その基本的な意味やメリット・デメリット、そして向いている人までを、あすかタックス&コンサルティングが解説しました。
サブリース契約は、確かに空室リスクを軽減し、手間を省いて不動産投資を始めやすくしてくれる制度です。しかし、その一方で「収益が思ったほど上がらない」「途中解約できずに困った」といったトラブルも少なくありません。大切なのは、「メリットだけに飛びつかず、契約内容をしっかり把握すること」です。そのためにも、不動産投資初心者こそ、契約前に専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

代表 石井 輝光

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